不動産のインスペクションって何? メリットやコスト、注意点について詳しく解説

不動産について

不動産のインスペクションとは、家や建物の状態を専門的に検査するプロセスです。この検査では、構造の安全性、設備の機能性、修理が必要な箇所などをチェックし、将来的な問題を予測します。

インスペクションを実施することで、取引の安全性を高め、予期せぬ問題を避けることができますが、一方でデメリットや注意すべき点も存在します。

この記事では、インスペクションのメリットやコスト、注意点について詳しく解説します。

インスペクションとは

インスペクションは、不動産の価値を上げ、迅速に売却するために重要な検査プロセスです。ここで言うインスペクションとは、宅地建物取引業法に基づいて国が設定した既存住宅の状態を調べるための基準に沿って実施されるものです。

この調査は、既存住宅状況調査技術者講習を受講した建築士によって行われます。インスペクションの実施自体は購入者や売主に義務付けられているわけではありません。

民間企業による「ホームインスペクション」や「住宅診断」といったサービスも存在します。

インスペクションの調査対象部位の例

住宅インスペクションでは、主に次のような重要部位がチェックされます。

【構造的な強度を支える部分】
戸建て: 基礎、柱、梁、壁、屋根など、住宅の骨組みを構成する主要な部分。
マンション: 基礎、床、壁、外壁、屋根など、建物全体の強度に関わる核心的な部位。

【水害を防ぐ部分】
戸建て: 基礎、屋根、外壁、窓など、雨水の侵入を防ぐための部分。
マンション: 外壁、窓、屋根、水道管など、水漏れや雨漏りを防ぐ要素。

これらの部分を詳細に調査することで、住宅の状態、例えば雨漏り、床下の腐食、建物の傾斜などがないかを確認し、住宅が通常有するべき品質を持っているかを判断します。

法改正により高まるインスペクションの需要

2018年に実施された宅地建物取引業法の改正で、不動産取引におけるインスペクションが義務化されました。

宅建業者に義務化されたインスペクション関連の項目は以下の通りです。

  1. 媒介契約締結時に、建物の状況調査を行う専門家の紹介について書面に記載し、依頼者に提供する。
  2. 購入希望者に対して、建物の状態調査結果の概要を含む重要事項の説明を行う。
  3. 売買契約成立時に、建物の現状に関して双方が確認した事項を記載した書面を提供する。

この改正法は、インスペクションへの関心を高め、その結果住宅売買の際に事前に実施することが一般的になりつつあります。

参考:住宅瑕疵担保履行法および住まいの安心総合支援サイト|国土交通省

【売主側】インスペクションのメリットと注意点

売主側の視点で、インスペクションのメリットと注意点を説明します。

売主側のメリット

売主側のインスペクションのメリットは、主に3つあります。

  • より良い条件での売却が期待できる
  • 他の住宅と差別化し、競争力を高めることができる
  • 契約不適合責任のリスクを軽減

それぞれ詳しく説明します。

より良い条件での売却が期待できる
中古住宅購入者はしばしば、以下のような懸念を持っています。

  • 隠れた箇所の劣化はないか
  • 住宅は長期間快適に過ごせるか
  • 保守や改修にどれくらいの費用が必要か

インスペクションは、第三者の専門家が行う客観的な検査のため、これらの不安を解消するのに役立ちます。

この「安心感」は中古住宅における大きな価値の一つであり、インスペクションを通じて、より良い条件での売却が期待できると言えます。

他の住宅と差別化し、競争力を高めることができる
中古住宅の売却を考える際、不動産業者として重要なのは市場内の「競合物件」との比較です。競合物件とは、似た築年数、広さ、価格帯を持つ他の物件のことをさします。

これらといかに差別化を図れるかが、物件の売れ行きや条件面に大きな影響を与えます。差別化の手段として考えられるのは、リフォームや徹底した清掃、価格調整などですが、中でもインスペクションはコストパフォーマンスが良く効果的です。

契約不適合責任のリスクを軽減
不動産を売る立場にある人は、通常「契約不適合責任」を負うことになります。これは、売却後に物件が契約内容に沿っていない欠陥や問題を抱えていた場合、売主がその修理や価格調整に応じる必要があるという責任です。

インスペクションを利用することで、物件の現状についてより詳細な情報を得ることが可能になります。契約不適合責任は、「契約に適合しない」部分に対して適用されるため、売主と買主が事前に認識していた問題については、後から責任を問われることはありません。

このため、インスペクションを通じて物件の現状を明らかにすることは、売主が負う契約不適合責任のリスクを低減させることにつながると言えます。

売主側の注意点

インスペクションを行う際、売主側が注意すべき点は以下の通りです。

インスペクションで欠陥や不具合が見つかる可能性がある

インスペクションで重要な問題が指摘された場合、修理には費用がかかるだけでなく、その状態では買い手がつかない可能性もあります。
そのため、売却計画の見直しが必要になることがあります。

【買主側】インスペクションのメリットと注意点


買主側の視点で、インスペクションのメリットと注意点を説明します。

買主側のメリット

買主側のインスペクションのメリットは、主に3つあります。

  • 取引の安心感が得られる
  • 修理や維持費の見積もりが可能に

それぞれ詳しく説明します。

取引の安心感が得られる
インスペクションは、中立的な第三者の専門家が行う客観的な評価です。売主や不動産業者に依存せず、専門的な視点での住宅検査を受けられることは、大きな買い物である不動産取引において、買主は大きな安心感が得られます。

修理や維持費の見積もりが可能に
インスペクションは、安心感を提供するだけでなく、住宅の具体的な状態を明らかにし、それに基づいて今後必要になる修繕やメンテナンスの費用を事前に把握できるメリットもあります。
リフォームを計画していない場合でも、中古住宅を購入する際に現在の状態を理解することで、将来の修繕予定を立てたり、維持費用を見積もったりすることができます。

瑕疵(かし)保険の加入が可能に

瑕疵保険は、住宅購入後に発生する雨漏りや構造的な問題などの不具合に対し、修理費用をカバーする保険制度です。
この保険に加入するためには、事前にインスペクションを行う必要があります。

買主側の注意点

売主がインスペクションを望まない場合も
インスペクションは通常、不動産の引き渡し前に行われますが、売主がこれを行うことを選択しない場合もあります。

売主がインスペクションに対して持つ「不必要に問題を探されるのではないか」という懸念は珍しくありません。しかし、インスペクションの真の目的は、細かい問題を探すことではなく、購入者に安心感を提供することにあります。

インスペクションが「安全で安心な購入を実現したい」という買主の願いから来ていることを伝えると、最初は消極的だった売主も実施に向けて前向きになることがあります。

マンション購入の場合は、物件が属する管理組合の同意も必要です。このため、詳細な検査を行う前には管理組合への確認が必要になります。

「購入申し込み後の取消をしない」という条件を提示されることも
場合によっては、「購入申し込み後の撤回をしない」という条件で、検査の実施に同意してもらえることがあります。この取り決めが買主にとってリスクになるかは、買主の状況や希望によります。

もし「この物件をどうしても手に入れたい」と強く思うなら、その条件下での検査を受け入れる価値があるでしょう。しかし、「条件が合わなければ別の物件を探す」と決断するのも正しい選択です。

インスペクションは、中古住宅の取引においてまだ一般的ではないため、しばしば交渉の一環として扱われることがあります。

インスペクションと瑕疵保険の相互関係

瑕疵保険に加入するためには、ほとんどの場合、事前にインスペクションの実施が求められます。

インスペクションにより、物件の状態が詳細に記録され、潜在的な問題が明らかになるため、保険会社はこの情報を基に保険の適用範囲や条件を決定します。

この手順により、購入者は物件の詳細を深く把握し、適切な保険のカバーを受けることができるようになります。

瑕疵保険とは
瑕疵保険は、物件の購入後に発覚した構造上重要な部分の隠れた瑕疵(欠陥)に対して、修復費用などを補償する制度です。この保険は、購入後に予期せぬ問題が発生した場合に、購入者が負担する経済的リスクを軽減します。

瑕疵保険のための検査は、保険加入の可否を判定する目的で行われます。この検査は保険対象の範囲に限定して行われるため、一般的なインスペクションとは調査項目が異なります。

つまり、瑕疵保険の検査基準は宅地建物取引業法における基準とは一線を画します。しかし、「住宅瑕疵担保責任保険法人に登録された検査事業者」など、瑕疵保険加入の条件を満たすことができるインスペクションを提供する業者も存在しますので、利用する際はあらかじめ調べておくことが重要です。

インスペクションに要する時間と期間

インスペクションを完了するまでには、全体で約2週間の時間が必要です。詳しくは以下の通りです。

  • 依頼から検査実施までは約1週間
  • 検査後の報告書を受け取るまでに再び1週間

検査自体の所要時間は約1〜3時間です。

ただし、地域によってはインスペクターの数が限られている場合があり、すぐに検査を行えないこともあります。売却のスケジュールを立てるときは、余裕をもって計画することをお勧めします。

インスペクションにかかる費用

インスペクションにかかる費用は、物件の種類、大きさ、立地、調査の範囲や深さによって大きく異なりますが、一般的な目安としては数万円から数十万円の範囲で変動します。

戸建て住宅の場合、費用は平均して5万円から10万円程度が一般的ですが、大きな家や調査内容が多岐にわたる場合は、それ以上の費用がかかることもあります。

マンションの場合は、共用部分の検査が含まれないため、戸建てに比べて若干安価になる傾向がありますが、こちらも物件の広さや検査の詳細度によって費用が異なります。

また、地方によってはインスペクターの数が限られているため、交通費などの追加費用がかかることもあります。インスペクションの依頼を検討する際には、複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。

瑕疵保険に加入する場合、その保険の加入条件としてインスペクションが必要になることもあり、この費用も総合的に考慮する必要があります。

補助金を利用できることもある

地域や条件によっては、補助金を利用できることがあります。下記は、補助金を助成している自治体の一例です。条件や補助金額は、各自治体によって異なります。

地域 対象住宅 補助額
東京都 都内に所在する売買予定の戸建て住宅 補助対象経費の2分の1以内(補助限度額3万5千円、補助対象限度額7万円)
兵庫県 売買を予定している県内の既存の一戸建て住宅(店舗等併用住宅にあっては、床面積の過半が居住の用に供されているものに限る。) 対象住宅のインスペクションに要する経費のうち低い額(a:インスペクション1件当たりの経費、b:2万5千円)
福岡県 以下の条件を全て満たした中古一戸建て住宅及び共同住宅
①敷地が福岡県内であること
②売却予定であること
10000円または20000円(予算上限に達し次第、締め切り。申し込みの状況により一部補助が受けられない場合があります。)

インスペクション業者の選び方


インスペクション業者を選ぶ際には、以下の3つのポイントが重要です

経験と実績

中古住宅はその構造や経年変化によって一軒一軒状態が異なります。資格の有無だけでなく、業者の経験や取り扱った案件の実績を考慮することが重要です。

建物の構造には多岐にわたる工法が存在します。あらゆる工法に精通しているインスペクターは珍しいため、依頼する物件の工法について十分な知識と経験を持つ業者であるかを確認することが肝心です。

サービスの範囲と詳細

提供されるサービス、どのような項目が検査に含まれるのかを理解しましょう。一部のインスペクション業者は基本的なチェックのみを提供する場合があり、他の業者はより詳細な調査や追加のテスト(例えば放射能検査やアスベスト検査)を提供することがあります。

また、インスペクション後の報告書の詳細度も業者によって異なりますので、どの程度の情報を提供してくれるのか事前に確認することが大切です。

口コミや評判

過去の顧客からのフィードバックやレビューを確認し、業者の評判をチェックしましょう。

オンラインでの評判、友人や家族からの推薦、不動産業者からの紹介など、さまざまな情報を参考にすると良いでしょう。

インスペクションの依頼から支払いまで

インスペクションの依頼から支払いまでの一連の流れは以下のようになります。

1)業者選定
資格、経験、実績を基にインスペクション業者を選定します。

2)見積もりの依頼
選定した業者に連絡を取り、インスペクションの見積もりを依頼します。

3)見積もりの確認、申し込み
提出された見積もりを確認し、内容に問題がなければ承認します。

4)契約の締結
見積もりに同意したら、正式な契約を結びます。

5)インスペクションの実施
契約に基づき、約束された日時にインスペクションを実施します。

6)報告書の受領
インスペクション完了後、詳細な報告書が提出されます。

7)報告書の確認
提出された報告書を確認し、不明点や疑問点があれば業者に問い合わせます。

8)支払いの手続き
全てのプロセスが完了し、報告書に問題がなければ、業者に対して支払いを行います。

この流れを踏むことで、インスペクションの依頼から支払いまでスムーズに進行します。
インスペクション業者を見つける方法として、自ら探す以外にも、不動産会社を通じて紹介してもらうことも可能です。
インスペクションの実施を検討している場合は、まず不動産会社に相談するのが良いでしょう。

まとめ

本記事では、不動産のインスペクションについて、そのメリット、コスト、そして可能な補助金について解説しました。

インスペクションによって、隠れた欠陥を発見し、将来的なリスクを回避することができますので、購入後の不安や予期せぬ出費を大幅に減らすことが可能です。また、インスペクションの結果は価格交渉の材料としても活用でき、購入者にとって有利な条件を引き出すことができます。

インスペクションの費用が最初は高く感じられるかもしれませんが、長期的に見れば、購入する物件に隠れた問題がないことを確認することで、将来的な修繕費用やストレスを避けることができるため、決して無駄ではありません。

さらに、一部の自治体では、中古住宅購入時のインスペクション費用の一部を補助する制度があります。これを利用することで、コスト負担を軽減し、より安心してインスペクションを実施することができます。

中古物件を購入する際には、インスペクションを上手に活用しましょう。

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