親から引き継いだ不動産を早期に手放すことのメリット! 手続きと税金の軽減方法を簡潔に説明

暮らしのマネー術

相続が始まると多くの手続きが必要になりますが、相続した不動産の早期売却は特にお勧めです。すぐに売却することで、数年後に比べて税金を大幅に節約できる可能性があります。

この記事では、遺産分割の手順や相続不動産の売却プロセスについて説明し、売却による税金軽減の特例、関連する費用、必要書類についても簡潔に紹介します。

相続不動産の売却手順

相続不動産の売却には以下の二つのアプローチがあります。

  • 相続人全員で不動産を共有名義にした後に売却する方法
  • 最初に一人の代表者が不動産を相続し、売却後に収益を相続人間で分配する方法(換価分割)

特に推奨されるのは、換価分割によるアプローチです。これは、売却プロセスを簡素化し、その後で収益を分配します。
ただし、どちらの手法にも利点と欠点があるため、自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。

相続人全員で不動産を共有名義にした後に売却する方法

共有名義での相続不動産売却は、相続人全員の名前で名義変更を行い、その後不動産を売る手法です。
この方法の利点は、税金の負担が全員に等しく分配され、売却の手続きが一人に偏ることがない点です。しかし、売却には全名義人の書類が必要で、契約には全員の出席または委任状が求められます。
また、司法書士への費用が増え、共有中に新たな相続が発生すると権利関係が複雑になるデメリットがあります。
手続きは複数で協力しながら進める必要があり、売却を進めるには調整役が欠かせません。

最初に一人の代表者が不動産を相続し、売却後に収益を相続人間で分配する方法(換価分割)

この方法では、代表者一人が不動産の名義人となり、売却後の収益を経費控除後に相続人全員で分け合います。これは「換価分割」と呼ばれています。
メリットとしては、契約手続きが代表者一人で完了するため、全体としての手続きがスムーズになります。しかし、デメリットとしては、すべての手続きと固定資産税の責任が代表者に集中する点が挙げられます。
不動産売却における全員の同意は必須ですが、代表者が名義人であれば、他の相続人の直接的な関与は必要ありません。ただし、売却に伴う費用や税金の取り扱いについては、事前に相続人間で合意しておくことが重要です。

相続から不動産を売却するまでの手順

不動産を相続してから売却するまでの流れは、以下の通りです。

  • 遺言書の有無
  • 相続資産と権利者を明確にする
  • 遺産分割合意:資産の配分方法を決定する
  • 名義変更手続き:不動産の登記を更新する
  • 相続税の申告・納税
  • 不動産売却:相続した不動産を市場に出す
  • 確定申告

遺言書の有無

相続が始まると、最初に行うべきは遺言書があるかどうかの確認です。もし遺言書が存在すれば、その内容に基づき遺産を分割します。遺言書がなければ、法定の相続人同士で遺産分割を話し合います。
遺言書には自筆証書、秘密証書、公正証書の3タイプがあります。自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所での検認が必要ですが、公正証書遺言は公証人が保管しているため検認は不要です。公正証書遺言の場合、公証役場で原本の保管先を調べ、必要な文書を再発行できます。

相続資産と権利者を明確にする

次に、相続に含まれるすべての財産と相続人を洗い出しましょう。
相続財産は、不動産や預金、株式、保険金などのプラス資産だけでなく、借金やローンの残高、葬儀費用などのマイナス財産も含まれます。
被相続人が財産リストを残していない場合、不動産の所在を確認するには、地方自治体で名寄帳の交付を受けることが一つの方法です。
もし遺言書がなかったり、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合は、法定相続人が集まって遺産の分配を話し合います。この際、まず誰が相続人であるかを明らかにすることが重要です。

遺産分割合意:資産の配分方法を決定する

相続財産と相続人が明らかになったら、次は遺産の分配に進みます。遺言がなければ、相続人全員で協議して遺産を分け合います。また、遺言があっても異なる分配を望む場合や、遺言に記載のない財産がある場合も、協議が必要です。
遺産分割協議は全員が直接集まる必要はなく、電話やオンラインツールを使って行うことができます。ただし、決定事項には相続人全員の同意が必要です。
分割方法や相続の比率は、相続人間の合意があれば自由に設定できます。

名義変更手続き:不動産の登記を更新する

遺産分割協議で不動産の新たな所有者が決定したら、次は被相続人からその相続人への名義変更、すなわち「相続登記」を行います。

不動産を換価分割する際は、選ばれた代表者の名義に変更し、共有名義での相続後の売却を選んだ場合は、全共有者の名義にします。相続登記の具体的な手続きについては後ほど詳しく説明します。

相続税の申告・納税

相続財産の合計が基礎控除を上回る場合、相続税の申告と支払いが必要になりますが、基礎控除内であれば申告は不要です。相続税は、財産の合計からマイナス財産(例えば葬儀費用など)と基礎控除を差し引いた金額に対して計算されます。

もし配偶者控除や他の特例を適用して基礎控除内に収めることができる場合でも、申告は必要です。相続が発生したことを知った翌日から数えて10カ月以内が、相続税の申告と納税の期限です。

不動産は相続税の対象であり、その税額を算出するには不動産の「相続税評価額」が必要です。建物の場合は固定資産税の評価額を、土地の場合は「相続税路線価」を基に評価します。

不動産売却:相続した不動産を市場に出す

相続した不動産は、以下のいずれかの方法で売却することができます。

  1. 知人や親族への直接売却
  2. 不動産会社を通じた仲介による売却
  3. 不動産会社への直接買取

売却を不動産会社に依頼する場合、最初に「不動産査定」を受けることになります。これは、不動産の現状を確認し、どの程度の価格で売れるかの見積もりを出してもらうものです。査定は名義変更前でも可能ですが、スムーズな売却のためには早めに依頼することが望ましいです。

確定申告

不動産売却から得た譲渡所得がある場合、翌年の2月から3月にかけて確定申告を行い、必要な税金を納めます。税負担を軽減する特例の申請もこの時にします。換価分割による売却の場合も同様で、譲渡所得が発生すれば、全ての相続人が確定申告と納税の義務があります。たとえ相続時に不動産が一人の名義であったとしても、売却代金を分配された時点で、事実上の売却者とみなされます。また、各相続人は条件に応じて、税金の特例控除を個別に申請することができますので、該当する場合は申請を忘れずに行いましょう。

相続した不動産の名義変更手続き


相続した不動産を売るためには、まず被相続人から相続人への名義変更、つまり「相続登記」が必要です。この手続きは書類の準備によっては2ヶ月以上要することもあるため、早めに手順を確認し準備を始めることが重要です。

相続登記(名義変更)を行う際の手順は以下の通りです。

  1. 相続する不動産の登記事項証明書を取得して内容を確認する
  2. 名義変更に必要な各種書類を集める
  3. 登記申請書を準備し、すべての書類を整える
  4. 準備した書類一式を法務局に提出する
  5. 法務局から「登記識別情報通知書」を受領する

相続する不動産の登記事項証明書を取得して内容を確認する

最初に、相続不動産の「登記事項証明書」を取得し、不動産の現在の所有者をチェックします。この証明書は、一般に登記簿謄本とも呼ばれます。もし不動産の名義が被相続人ではなければ、先にその名義を被相続人に変更する手続きが必要です。

名義変更に必要な各種書類を集める

相続が始まったら、相続登記に必要な以下の6種類の書類を集める必要があります。

  • 亡くなった被相続人の住民票の除票
  • 亡くなった被相続人の戸籍謄本(出生から死亡時まで)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の住民票(マイナンバーの記載のないもの)
  • 固定資産評価証明書(最新年度のもの)
  • 相続人の印鑑証明書

登記申請書を準備し、すべての書類を整える

不動産の名義変更には「登記申請書」の作成が必要です。この申請書は、法務局の窓口やウェブサイトから入手できます。ウェブサイトには記入例もあるので、それを参考にしながら申請書を作成しましょう。

法務局から「登記識別情報通知書」を受領する

書類を法務局に提出し、不備がない場合、手続きは約1~2週間で終了します。手続き完了後、新しい名義人宛に「登記識別情報通知書」が発行され、これを受け取ることで不動産の名義変更が完了します。

相続不動産を3年以内に売却すれば、税金が軽減される

相続不動産を3年以内に売ることで、税金の特例を利用するチャンスがあります。利用できる特例には以下の2つがあります。

  • 相続財産の取得費加算特例: 支払った相続税の一部を不動産の取得費として加算できます。
  • 相続空き家の3,000万円特別控除: 被相続人が住んでいた不動産を売却する際に、最大3,000万円の控除が可能です。

不動産売却は通常3~6ヶ月を要しますが、地方の土地などではもっと時間がかかることもあります。特例適用の期限を逃して税金が増えるのは避けたいため、特例が利用できるなら早めに売却プロセスを開始することをお勧めします。

相続財産の取得費加算の特例について

「相続財産の取得費加算の特例」とは、相続や遺贈によって得た不動産を特定の期間内に売却した際に利用できる制度です。この特例では、不動産の売却による利益を計算する際、土地や建物に対して支払った相続税の額を費用に上乗せすることが可能です。

相続空き家の3,000万円特別控除の特例について

「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」とは、特定の条件を満たす相続または遺贈により得た被相続人の住宅やその敷地を売却した際、得られる利益から最大3,000万円を差し引ける制度です。

相続不動産売却時の税金と経費

相続不動産を売る際に発生する費用には以下が含まれます。

費用の種類 金額の目安
相続登記の登録免許税 不動産の固定資産税評価額×0.4%
譲渡所得税 {売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額}×税率
印紙税 1,000円~6万円
仲介手数料 (売却価格×3%+6万円)+消費税
相続登記費用(司法書士への報酬) 6~8万円
測量費用 50~80万円
解体費用 100~300万円
ハウスクリーニング費用 3万~10万円
各種書類の発行費用 約300円/枚

相続不動産売却の際に必要な書類一覧

相続不動産を売る前には、まず相続人の名義に「相続登記」による名義変更を行うことが必要です。

相続登記に必要な書類一覧

相続登記に提出する必要がある書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本や除籍謄本
  • 被相続人の生涯にわたる連続した戸籍の謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票や戸籍の附票(登記簿上の所有者が被相続人であることの証明)
  • 相続人の最新戸籍謄本
  • 相続人の住民票
  • 不動産の固定資産評価証明書

相続不動産売却時に必要な書類一覧

不動産の種類別に必要な書類を解説します。

  1. 戸建て物件売却に必要な書類
  2. 土地売却に必要な書類
  3. マンション売却に必要な書類

戸建て物件売却に必要な書類

  • 売主の実印および印鑑証明
  • 不動産の登記識別情報通知書
  • 確定測量図と境界確認証明
  • 最新の固定資産税納税証明書
  • 最新年度の固定資産評価証明書
  • 間取り図(存在する場合)
  • 建物の建築確認済証と検査済証(存在する場合)
  • 耐震診断結果(存在する場合)
  • アスベスト調査報告(存在する場合)
  • 住宅性能評価書(存在する場合)
  • 購入時の契約書や重要事項説明書(存在する場合)

土地売却に必要な書類

  • 売主の本人確認用の身分証明書
  • 売主の実印とその印鑑証明
  • 不動産の登記識別情報の通知書
  • 不動産の確定測量図と境界に関する確認書
  • 最新の固定資産税の納税証明書
  • 最新年度の固定資産評価証明書
  • 可能であれば購入時の売買契約書や重要事項説明書

マンション売却に必要な書類

  • 売主の身分証明書
  • 売主の実印と印鑑証明
  • 不動産の登記識別情報通知書
  • 最新年度の固定資産税納税証明書
  • 最新年度の固定資産評価証明書
  • マンションの管理規約や使用細則(存在する場合)
  • マンションの維持費に関する書類(存在する場合)
  • 分譲時のパンフレット(存在する場合)
  • 耐震診断報告書(存在する場合)
  • アスベスト使用調査報告書(存在する場合)
  • 購入時の売買契約書や重要事項説明書(存在する場合)

共有名義で相続した不動産を売却する際には、全共有者の実印と印鑑証明書、身分証明書が必要になります。さらに、契約に立ち会えない共有者がいる場合には、その人からの委任状の準備も必要です。

まとめ

相続した不動産を売却するのは、なかなか大変な作業ですよね。亡くなった大切な人から受け継いだ財産の扱いについて、多くの方が悩まれることと思います。

早期売却が税金を減らすチャンスであることを知り、正しいステップを踏んでいけば、精神的な負担も軽減されるはずです。
適切な遺産分割、スムーズな相続登記、そして最良の売却戦略を選択することが、皆さんのストレスを和らげる鍵となります。
この複雑なプロセスを少しでも楽に進めるためには、信頼できる不動産会社の選択が非常に重要です。

不動産のエキスパートに無料で相談してみませんか
不動産のエキスパートに無料で相談してみませんか

初めての不動産購入や売却など、不動産売買をトータルサポートします。
相続や資産処分など、法務・税務に関係する内容についてもお気軽にご相談ください。

不動産購入なら仲介手数料不要のリバリノ!
リバリノ物件一覧はこちらから

ピックアップ記事

関連記事一覧