認知症になると金融資産を凍結される?理由や対処法を紹介します!

不動産について

監修:中尾一英税理士事務所

相続対策についての相談会やセミナーを開催すると、「自分が認知症になってしまったら、資産が凍結されて銀行からお金が引き出せなくなるの?」と漠然と不安に思われている方がとても多く見受けられます。病気になった時の治療費や老人ホームへの費用など、家族はどうやってお金を工面するの?といったお話を聞くたびに、我が身のことより、残された方のことを想う日本人らしい優しさを感じております。今回は、そんな不安を少しでも解消できるよう、ご自身ができる事前対策として「家族信託」という選択や事後対策として「法定後見人制度」があることについてお話したいと思います。

1.認知症になってしまったら資産凍結!?

2025年には高齢者の5人に1人が認知症を抱えるという推定もでているほど、認知症は誰にでも発症するリスクがある病気というのは皆様のご存知のことかと思います。もし自分が認知症になってしまったら、ご主人が認知症になってしまったら、その場合は意思能力がないと判断されてしまい、「資産凍結」という状況が起きます。

資産が凍結すると・・
・銀行の預金が引き出せなくなる
・株式などの資産を動かせなくなる
・家の修繕等不動産の管理維持に必要な費用が支払えなくなる
・生前・暦年贈与など相続対策ができなくなる

といった、資産というお金にまつわることが凍結されてしまいます。
これは、詐欺・横領・口座の不正使用などの犯罪に巻き込まれないようにする対策ですのでとても大切なことですが、老人ホームに入居させたいけどまとまった資金が引き出せない、認知症の他に病気にかかってしまい治療を受けたいがお金が下ろせないなどといった問題が頻繁に起きているのも事実です。

現在、認知症による資産凍結は230兆円とも言われています。年金があるから老後は大丈夫、年金で足りない分は定期預金を解約しようと軽く考えていたのに、病気によって判断能力がなくなってしまったら銀行からの引き出しが簡単にできなくなってしまうのです。

認知症を発症した場合、「家族信託」の他にも認知症発症後に活用できる「法定後見人制度」というものがあります。まずはこちらを説明致します。

2.法定後見人制度とは

資産凍結を解除するには「法定後見人」を選任しなければなりません。法定後見人とは、認知症発症後(判断能力がすでになくなっている場合)に、本人の資産や権利を保護する役目を担います。
法定後見人は、家族が、家庭裁判所に申し立てます。後見人は家庭裁判所が選任するため自分たちで選ぶことができません。法律行為を行い、財産や権利の保護を図るため家族ではなく、専門的な知識をもった弁護士などが選任されることが多いようです。
後見人には報酬等の費用を本人がなくなるまで、長期間払い続ける可能性があります。また、第三者である後見人が財産の管理を行いますので自由度がなくなります。
必要なお金を引き出したい時には、後見人にその都度申請をし、後見人が承諾した場合に引き出すことができるため、時間もかかります。この後見人制度を活用した場合、途中で止めることができませんので、制度の活用には充分検討するべきです。

《法定後継人のメリット》

①資産に関すること等すべてに対して代理権が認められています。
②本人が行った法律行為に対して同意する権限(同意権)と、本人が行った法律行為を取り消す権限(取消権)も認められています。
但し、本人が行った日用品の購入の取り消しはできません。

《法定後見人のデメリット》

①申し立ての費用と手間がかかります。
申し立ての費用は、10万円超えることもあります。(医師の鑑定料5万円~10万円)
また、弁護士や司法書士に申し立てを依頼する場合には、10万円~30万円程度の費用がかかります。
②法定後見人に対する報酬が発生します。
財産額により、月額2万円~6万円程度かかります。
③成年後見監督人が選任された場合は、報酬として月額1万円~3万円程度かかります(成年後見監督人は、後見人を監督する人で、裁判所が選任します)。
④本人の資産や権利を保護するために、特別な行為をした場合には、その行為に対する報酬が発生します。
⑤本人の資産を保護するための制度であるため、積極的な資産運用はできません。

3.家族信託とは

家族信託とは、「家族を信じて、自分の財産を家族に託す」ことです。
意思疎通ができなくなると法定後見人制度に頼るしかありません。意思能力があるうちに家族信託を活用すれば、託された人の判断で本人のために必要な時に、引き出せる制度ですので、本人・家族の暮らしを守ることにもなります。
家族信託により、財産を託されて家族(受託者)が財産を管理します。御本人(委託者)と受託者の両当事者の合意の元で契約するため、両者に意思決定能力があることが前提となります。また、軽度の認知症で判断能力がある場合は認められるケースがあります。

家族信託を締結した段階で財産が受託者に行ってしまうのでは、といった不安もあると思います。委託者(本人)・受託者(託された人)の他に受益者(財産の保有者)という定めがあります。財産は託された人である受託者の名義になりますが、受益者(財産の保有者)をご自身にすれば財産の保有はご自身です。名義は受託者(託された人)になりますが、財産そのものは委託者である御本人のままということです。

たとえば、本人が経営するアパートの名義は受託者(託された人)になりますが、家賃収入は受益者である本人の収入になるということです。
また、名義変更をすると贈与税がかかると思われますが、家族信託の場合は発生しません。

《家族信託のメリット》

① 信頼できる家族に資産の管理を託することができます。
② 受託者に広い裁量を与えることができます。
③ 認知症と診断されても、信託した資産に対しては、資産凍結されることはありません。
④ 認知症により、自宅が空き家になる場合には、自宅を売却し、施設の入居費用に充てることができます。
⑤ 家族信託により、承継者を決めておくことで、相続が発生した場合の遺産分割が不要になります。

《家族信託のデメリット》

① 本人が認知症になった場合に、信託されていない資産は、凍結されます。
② 信託財産から発生する収益の額が3万円を超える場合には、毎年信託の計算書を作成し、税務署に提出する必要があります。
③ 信託契約を締結するため、専門家にかかる報酬額は、財産内容によって100万円をこえることもあります。
④ 認知症後の本人の法律を行う場合には、法定後見人を選任しなければなりません。

家族信託と遺言書の違い

財産の相続先を指定する方法として、遺言書があります。遺言書と家族信託の主な違いは、次のとおりです。

(ア) 遺言書は、死後に財産の相続先を決めるだけですが、家族信託は、二次相続まで指定することができます。
家族信託では、自分の死後には、自宅を配偶者に相続させ、配偶者がなくなった後は、長男に相続させるなど二次相続先まで指定することができるのです。
(イ) 生前の財産管理を家族に任せるのであれば、家族信託を締結する必要があります。
例えば、アパートの修繕費用の必要が生じた場合に、本人が認知症で意思能力がなければ、銀行かせら修繕費用を引き出すことができません。
修繕ができず、アパートの老朽化がすすみ、賃借人がいなくれば、資産価値を低下させることになります。
(ウ) 遺言書と家族信託の内容が異なる場合、家族信託が優先されます。
たとえ、家族信託の後に、遺言書が作成されたとしても、家族信託の内容が優先されるのです。

ただし、注意しておかなければいけないのが、家族信託で相続先を指定できるのは、信託した財産のみですので、信託していない財産については、遺言書で相続先を指定してお
くのが良いでしょう。

信託の倒産隔離機能

信託財産は、委託者でも受託者から独立した財産として取り扱われます。
このため、万一委託者が自己破産した場合でも、債権者は、信託財産に差押え等の強制執行をすることができません。また、受託が自己破産した場合においても同様です。
ただし、受益権は債権ですので、債権者は差押え等の強制執行は可能です。
例えば、アパートを信託した場合に、家賃をもらう権利(受益権)を有する受益者が自己破産等した場合には、そのアパートについては、差押え等強制執行はできませんが、家賃は差押え等強制執行可能ですので、ご注意してください。

まとめ

いかがでしたか?簡単な概要のみの説明になってしまいましたが、家族信託のメリットはご理解いただけましたでしょうか。認知症と診断されても資産凍結されないという事が最大のメリットですね。健康なうちにできる相続対策のひとつとして家族信託を検討してみて損はないと思います。中尾一英税理士事務所では、家族信託を始め、ひとりひとりに合わせた最善の相続対策をご提案いたします。無料相談も承りますのでお気軽にお問い合わせください。

監修 中尾一英税理士プロフィール
地方銀行に34年間勤務、銀行では16年間事業再生、事業継承業務に従事し、事業計画書の作成・実行支援に取り組んでおりました。藤沢・茅ヶ崎エリアを中心に活動しております。元銀行員の強みを活かした細やかで、親身な対応を心がけております。
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