マイホームを売却したら確定申告しなければならないの?

不動産について

監修 中尾一英税理士

今回は、不動産を売却された方が、忘れがちな翌年の確定申告についてのお話です。不動産の売買代金の決済をして、引渡しが完了して一安心。不動産を購入した金額より売却額が多い、つまり不動産売却によって利益が出た場合は、翌年3月15日が締め切りの、確定申告を行う義務があるのです。

不動産の売却により利益が出た場合は確定申告をしないでいると追徴課税されてしまいます。
また、損失が発生した場合には、確定申告をする義務はありませんが、確定申告することで所得税の控除を受けられる場合がありますので、確定申告をすることをお勧めいたします。

1.譲渡所得を計算してみよう

譲渡所得は、以下の算式で求めます。

譲渡所得 = 不動産の売却価格 - (不動産の取得費 + 譲渡費用 )

取得費とは
土地建物の購入代金+取得にかかった費用の合計-建物の減価償却費累計額*1
譲渡費用とは
売却するためにかかった費用(仲介手数料など)
減価償却費とは :
建物の取得費×償却率(2007年4月1日以降に取得した建物の場合)
減価償却累計額とは、減価償却費×経過年数(6ヵ月以上の端数月は1年とし、6ヵ月未満の端数月は切り捨て)

*1減価償却費とは、建物の価値を耐用年数に応じて算出したもので国税庁が、次のとおり定めた償却率と経過年数から計算します。

建物の構造 居住用 アパート、賃貸マンション
償却率 耐用年数 償却率 耐用年数
木造 0.031 33 0.046 22
木骨モルタル造 0.034 30 0.050 20
鉄骨造 骨格材の肉厚が3ミリ以下 0.036 28 0.053 19
骨格材の肉厚が3ミリ超4ミリ以下 0.025 40 0.038 27
骨格材の肉厚が4ミリ超 0.020 51 0.030 34
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 0.015 70 0.022 47

この算式により、譲渡所得が発生した場合には、確定申告を行い、譲渡所得税を計算しなければなりません。

一方、損失が出た場合には、確定申告すると損益通算・繰越控除が受けられる場合があります。翌年に支払う税金を軽減することができるのです。

例えば、マイホームの買い替えにより、損失が発生した場合と、買い替えをせず売却した場合においては、以下の控除特例を使うことができます。

(1)マイホームを買い替えた時に損失が発生した場合:譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
(2)買い替えせず、損失が発生した場合:特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

繰越控除の特例は売却した年の翌年から最長3年間、譲渡損失を繰り越して税金を計算できる措置です。

合計最長4年間の所得税や住民税を軽減できます。

詳しくは国税庁「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を参照ください

2.いくらかかるか計算してみよう

譲渡所得が発生した場合にかかる税額は以下の通りです。所有期間が5年を超えると税率が軽減されます。
譲渡所得に以下の税率を掛け算出します。

・長期譲渡所得(5年超)の税率:
所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%
・短期譲渡所得の税率(5年以下):
所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%=39.63%

3.マイホームの3000万円特別控除の特例と所有期間10年超えの軽減税率

居住していた不動産を売却する場合、1人につき最大3000万の特例控除が受けられます。
つまり、この特例を適用すれば、譲渡所得が3000万円以下であれば、譲渡所得税はかからないことになります。
ご夫婦の共有名義だった場合は2人分の6000万円になります。

(適用条件)
・居住していた時期から3年以内に売却すること
・3年位内に特例を受けていないこと
・マイホーム以外の土地を活用して利益を得ていないこと
・売却した年から3年以内にマイホームの買い替えやマイホーム交換の特例の適用を受けていないこと
・災害によって損失した家屋の場合は住まなくなってから3年以内に売却すること
・親子関係などで売買していないこと

など適用条件がありますのでご注意ください。

また、住まなくなった家屋を取り壊した場合には次の2つの要件に該当することも必要です
イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

詳しくは国税庁の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」参照ください。

特別控除適用により税額がかからない場合も含め、売却した翌年に確定申告をする必要がありますので必ず行いましょう。

 

また、相続した実家を売却する時など、空き家にも適用できます。

・相続開始直前まで一人暮らし、老人ホームに入所していた(要介護認定)
・売却価格が1億円以下であること

など適用条件があります。

空き家適用に関しては、様々な税額控除がありますので、税理士に相談することをお勧めいたします。

詳しくは国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を参照ください。

 

3000万円の特別控除を適用しても譲渡所得がプラスになった場合、所有期間が10年超えの場合、軽減税率を受けることができます。

譲渡所得が6000万円までの税率:
所得税10.21%(10%+復興特別所得税0.21%)
住民税 4%

譲渡所得6000万円超えた分の税率:
所得税15.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%)
住民税 5%

ほとんどの方はマイホームの3000万円特別控除で譲渡所得は0円になります。特別控除を適用して税額が0になる場合でも、申告義務は発生しますので忘れずに確定申告を行いましょう。

4.給与などの所得の課税に影響するの?

所得税には、給与所得のようにすべての所得を合算した課税所得に税率を掛ける「総合課税」と他の所得は切り離した所得に課税を掛ける「分離課税」があります。
不動産売却は、分離課税方式で計算しますので、他の所得税額に影響することはありません。

5.譲渡所得で利益が出ていて確定申告しないとどうなる?

利益が出ているのに、確定申告をしなかった場合、15~20%の無申告加算税が加算されます。また、申告した税を期限内に納税しなかった場合には遅延税が加算されます。

国税庁は登記簿記録などから推測し、利益が出ている人に調査員が訪ねてくることもありますので、必ず行いましょう。

6.不動産を購入した場合には、確定申告をしなければいけないの?

住宅ローンを借りて、マイホームを購入した場合には、確定申告をしてください。
確定申告をすることにより、一定の要件を満たしていれば、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する「住宅借入金等特別控除」の適用を受けることができます。

また、親や祖父母から贈与を受けてマイホームを購入した場合には、一定の要件をみたしていれば、確定申告をすることにより、省エネ当住宅の購入の場合には、1,000万円まで、そのたの住宅購入の場合には、500万円まで、非課税になる特例を適用できます。
なお、確定申告は、翌年3月15日までの確定申告期限内に行わなければこの特例の適用を受けることができませんので注意してください。

 

まとめ
日本では、納税者の一人一人が、自ら税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付する申告納税制度を採用しています。この所得の申告することを確定申告といいます。
この確定申告は、税金を納付するためだけではなく、払いすぎた税金を還付してもらうこともできるのです。
また、確定申告期限内に確定申告をすれば、特例の適用を受けられ、税金を納めずに済むこともあります。
確定申告を期限内に行うためには、不動産を購入した契約書、支払った費用等の領収書を保存しておき、取得価額を把握しておきましょう。
取得価額がわからない場合には、売却価額の5%が取得価額になります。つまり、売却価額の95%が譲渡所得になり、多額の税金を納付しなければならない可能性がありますので注意しましょう。

 

監修 中尾一英税理士プロフィール
地方銀行に34年間勤務、銀行では16年間事業再生、事業継承業務に従事し、事業計画書の作成・実行支援に取り組んでおりました。藤沢・茅ヶ崎エリアを中心に活動しております。元銀行員の強みを活かした細やかで、親身な対応を心がけております。
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